空手の世界に入ると、多くの人が「強くなりたい」という気持ちを持ちます。
試合で勝ちたい。
誰よりも強くなりたい。
黒帯を取りたい。
その気持ちはとても大切です。
私自身も、強さを求めてここまで空手を続けてきました。
ですが、長く空手を続ければ続けるほど、気付かされることがあります。
それは、“本当の強さ”とは何かということです。
若い頃は、体力もあります。
反応も速く、勢いもある。
多少無理をしても動けます。

しかし、人は必ず歳を重ねます。
どれだけ強かった選手でも、いつか身体は衰えていく。
筋力も、スピードも、回復力も若い頃とは違ってきます。
それでも、長年空手を続けてきた先生方や先輩方には、若い選手には出せない“重み”があります。
なぜなのか。
それは、経験を積み重ねてきたからです。
勝った経験だけではありません。
負けた経験。
苦しかった経験。
辞めたくなった経験。
道場を守る苦労。
仲間との別れ。
責任。
葛藤。
そういった数えきれない経験を積み重ねながら、それでも空手を続け、道を繋いできた。
だからこそ、その言葉には重みがあり、その立ち姿には説得力があります。

今、私たちがこうして稽古できる場所があるのも、大会があるのも、仲間と汗を流せる環境があるのも、すべて先人たちが作り上げてきてくれたものです。
何もないところから道場を立ち上げた人。
空手が理解されない時代に広めてくれた人。
厳しい時代でも道場の灯を消さなかった人。
その積み重ねの上に、今の私たちは立っています。
だからこそ、先人を敬うということは、とても大切なのです。
最近は、効率や結果ばかりを求める時代になりました。
「自分が強ければいい」
「結果を出した人が偉い」
そんな考え方も増えているように感じます。
ですが、本当に人から尊敬される人というのは、実力だけの人ではありません。
感謝を忘れない人。
礼儀を大切にできる人。
人の苦労を理解できる人。
自分一人ではここまで来れなかったと分かっている人。
そういう人間に、自然と人は惹かれていきます。
逆に、どれだけ実力があっても、傲慢になり、周りへの感謝を忘れてしまえば、人は離れていきます。
空手は、ただ戦う技術を学ぶ場所ではありません。
人としてどう生きるかを学ぶ場所だと思っています。
礼に始まり、礼に終わる。
この言葉には、とても深い意味があります。
相手を敬う。
先輩を敬う。
仲間を敬う。
支えてくれる家族を敬う。
そして、自分を育ててくれた先人を敬う。
その積み重ねが、人間としての深みを作っていきます。
そして不思議なことに、先人を敬える人は、歳を重ねた時に、今度は自分が周りから敬われる存在になっていきます。
若さや力は永遠ではありません。
ですが、人として積み上げたものは、一生残ります。

空手の本当の価値は、試合の勝ち負けだけではなく、人生の中でどんな人間になっていくかにあるのだと思います。
私自身も、まだまだ未熟です。
だからこそ、これまで道を作ってくださった先生方や先輩方への感謝を忘れず、次の世代へしっかり繋いでいきたいと思っています。
長崎支部山田道場でも、技術だけではなく、人として成長できる道場でありたい。
強さだけではなく、感謝を持てる人へ。
礼儀を大切にできる人へ。
そして、いつか周りから尊敬される人材へ。
それが、私たちの目指す空手道です。
押忍


